暗譜について:暗譜の不安と暗譜教育

しかし、実は、「どうやったら暗譜出来るか」という悩みは、そんなに大多数ではないのではないでしょうか。

暗譜はやれば出来る(時間を掛ければ出来る)。

まぁ覚えるのも曲が複雑で長くなれば時間もかかるし、大変ということもあるんですけど…どちらかというと、基本的には暗譜出来てるんだけど、演奏してて突然、

次なんだっけ~!!!

頭真っ白~・・・・


という「真っ白の時間」がどうしたらなくなるかとかじゃないかと思うのです。暗譜との闘いの半分以上は、まさに頼るものは自分の記憶力しかなし、という状況下にある不安感との闘いじゃないかと…。

その不安感と闘うことで、音楽出来なくなるなら意味がないじゃないかということなのかな??最近は「暗譜強制せず」という入試や、コンクールが増えています。日本では少ないだろうし、ピアノ科にはまずないと思いますが、西洋でも最近は暗譜当たり前と思われているようなピアノでも暗譜をしないという演奏もあります。


賛否両論ありますが、子どもと、専門的に学ぶ学生は暗譜した方がいいなと思っています。暗譜は、どちらにしろやっぱり準備にそれなりに時間を掛けなきゃいけないので、学生時代の一日中練習出来る時に、沢山して浸透させないとと思いますし、突然の真っ白も、5回、10回と重ねるうちに、パニック度も減って何とかなる。そういう奮闘も含めて勉強だと思うので。


フルートという楽器は必ずしも暗譜を要求されません。有名コンクールでさえ暗譜の必要なしとかありますし、実際プロのフルート奏者の方々で、全暗譜でリサイタルする人というのは珍しいように思います。プロの方の演奏会となると、職人として自分に課題を負わせる面もあるでしょう が、聴衆は練習の成果を聴きにくるのではなく、音楽を聴きに来るわけですから、暗譜で不安が残る演奏になるよりかは、エンタテイナーとして暗譜じゃないけど素敵な演奏という方を選ぶ・・というのは当然に思えます。

しかしフルート科でも、時々暗譜が必要になったりすることもありました。中途半端に暗譜要求したりしなかったりのフルート。最初に「暗譜必要なし」という文字を見たのは、日本で某志望大学のフルート科入試。当時は私自身は暗譜に対する不安はなく、それより音を間違える方が恐ろしくて、暗譜を苦に思ったことはなかったので不思議でした。が、その辺から、若干暗譜を避ける期間がありました。

ところが・・・暗譜って一度しなくなると、舞台で暗譜演奏の恐怖度が半端なく上がります。なので日本にいた頃、邦楽の横笛習いに行って、いきなり初回から全部暗譜で宜しくと言われ、覚えられないし不安だし…。しばらくしないと、覚える能力も落ちちゃうのかもしれません。

かつて多くの国際コンクールで入賞(暗譜)したようなチェロ奏者で、某有名オーケストラで首席で弾かれていた方でさえ、「オケ始めて譜面みるようになったら、暗譜が不安で出来なくなったからもうしない」といっていました。譜面がないという不安感。譜面に齧りついて演奏してるわけではないですが、どこか心もとないというか。この「暗譜は習慣がなくなると怖くて出来なくなる」というのは、 鈴木メソードの鈴木慎一さんも愛に生きるの中で書いていましたけど。本当そうなんです。

自分が学生時代、この中途半端な 暗譜強要のせいで?「暗譜しなくても良いんだよ」という甘えがどこかにあったせいか、何か余計恐怖が増大したように思います。「もう絶対暗譜で問答無用です」という邦楽の方が、ツベコベ言えないから潜在能力発揮(大袈裟)が発揮されたような。

そういう理由からも子どもの場合は、発表会でもレッスンでも暗譜させるべきだと思います。暗譜出来るまで練習させるという目的もありますが、子どもの頃に暗譜という習慣がなかったら、音楽は目で見るものという意識も出来るので、譜面台から離れられない子になってしまうように思います。ずっと譜面台と一緒に育った子が、大きくなって暗譜を始めるのは相当苦です。
小学校の頃は鼓笛隊でマーチングバンド(当然暗譜)したりしましたし、今まで教えて来た子どもで暗譜出来なかった子は1人もいないです。それ位普通に出来る(曲も短いし)こと。普段のレッスンで、例えばメヌエットだったら3拍子で歩かせたり、色々工夫することで子どもも面白がって譜面台から離れます。

結局暗譜は大変だけど、その分見返りもあるから、若い時にチャレンジしてみて。ってことでしょうか。

暗譜なんて超簡単! 楽勝

と、言っているプロ奏者は誰もいません。大変なのよね…と皆さん仰る。かく言う私も、今は結構ジャンル限定暗譜。

のだめカンタービレの中に、コンクールで暗譜落ちして(細かい設定は置いといて)頭真っ白~って描かれてるシーンがあるのですが、先日もコンクールで暗譜落ちしてしまっている人がいました。そこで「コイツダメだー」って批判したり、笑う人は、音楽していない人か、自分棚上げな人です。気休め程度な話ですが、審査員だって、皆舞台の大変さは分かっている方々ばかりですから、暗譜落ちしたら恥というような意識を捨てて臨むことも大事だと思います。分かんなくなっちゃったよー〜(笑)くらいに思って臨めば、ストレスが緩和されて落ちない。「暗譜は大変だから、とにかくどこかに収まれば良いということにしている」という友人ピアニストの言葉。 

邦楽の笛の方、「400曲頭の中にある」とはやはりカッコいい。でも本には、全て覚える50歳頃に修行が終了して、芸の頂点は70歳って書いてありました。西洋音楽の世界だと30歳でももう年というような印象がありますが、世界によっては50歳まで修行らしいので、あまり焦らず、完璧と力まずが一番でしょうか?



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